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2017.04.16article
映画「マイケル・コリンズ」のダブリン歴史名所
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映画にまつわるダブリンのロケ地の紹介をしてもらいました。ダブリンの楽しみはパブだけではないですね。この映画は必見です。

映画「マイケル・コリンズ」のダブリン歴史名所

[by Samon, 2006年4月] 一部加筆:2017年4月

今年は、アイルランド独立へのターニングポイントとなった、イースター蜂起から90周年となり、ダブリンでは4月16日のイースターの日曜日にパレードが行われ、12万人がダブリン・シティー・センターを埋め尽くしました(2016年4月27日には100周年の記念式典とパレードが行われました)。映画「マイケル・コリンズ (Michael Collins) 」は、ハリウッドで成功したニール・ジョーダン監督が1996年に満を持して作った、アイルランド独立の英雄、マイケル・コリンズを描いたハリウッド大作です。実話を基に映画化したため、その解釈に評価はいろいろあるかもしれませんが、アイルランドの近代史を理解するにはよい映画です。映画の舞台は多くがダブリンのため、撮影もダブリンで行われ、多くの建物や風景が登場します。次のような場所を、映画を見ながら確認できます。

GPO (General Post Office / 中央郵便局)

GPO映画のオープニング、1916年のイースター蜂起(Easter Rising)のシーンは、実際に GPO のセットをダブリンに作り撮影したそうです。オコンネル・ストリートを再現したこのセットは、アイルランドで作った映画用セットとしては最大で、まさにハリウッド資本の凄さを見た思いがしました。映画のDVDではドキュメンタリーが付いていて、それによると、多くの一般市民がエキストラに使われたようです。参加者は家に残っている一番古そうな衣服を着ていったそうです。ダブリンの私の知合いも、撮影当時の同じような話をしてくれました。実際の GPO は現在もダブリンの顔として忙しく働いています。屋内は多くの人が列を作る普通の郵便局です。1916年の出来事を思わせるものは、壁に掛けられている蜂起の様子を描いた絵画ぐらいでしょう。でも GPO の外側の柱には、当時の戦闘時の弾痕がいくつも残されています。もし傍を通ることがあれば柱を見上げてみてください。GPO の窓際にはイースター蜂起で亡くなった人々を記念して、死ぬ時も石柱に体を縛り、立ったまま死んでいったというアイルランドの伝説の英雄、クー・フラン (Cú Chulainn)の最期のシーンを再現したブロンズ像が飾られています。

 

キルメイナム刑務所跡 (Kilmainham Gaol)

この刑務所跡はシティーセンター北の、フェニックス・パークの近くにあります。他の映画でも利用されているので、見覚えがある方もいると思います。一番印象的なのは、同じくアイルランドを題材としたダニエル・デイ・ルイスの「父の祈りを」でしょう。一目でわかりました。見学ツアーではイースター蜂起のメンバーが入っていた独房や処刑場所(Stone-breakers' yard)、彼らの最後の様子などを紹介してくれます。「マイケル・コリンズ」では知ることが出来なかった、イースター蜂起の個々のメンバーの逸話が印象的で心打たれます。ここは多くの映画の舞台となった場所を見る楽しさがあり、また、アイルランドの歴史を考えさせられる興味深い場所でした。同じ敷地内にはアイルランド独立に関わるの近代史関連の展示もあり、共和国政府樹立宣言書などもありました。

 

クローク・パーク (Croke Park)

Croke Park映画の中でゲーリック・フットボールの試合中に選手や観客が犠牲になる場面がありますが、この舞台が街の中心にあるアイルランド伝統スポーツ‐GAA専用スタジアム、クローク・パークです。撮影用のクローク・パークはカウンティー・ウィックローのブレイにセットが作られたそうです。実際のクローク・パークは 1920年以降何度か改修されて、映画の中の面影はありませんが、イースター蜂起のオコンネル・ストリートの瓦礫を使ったという " Hill 16 " という観客席だけは改修後も比較的昔の形を残すようにデザインされています。西側のスタンドは「ホーガン・スタンド」という名前が付いていますが、これは犠牲になったティぺラリー・チーム選手の名前をとったものです。スタジアムが現在の形になる前に、以前、試合を見ましたが、すごい観客数と応援でした。今は8万人を超す収容人数を誇る巨大スタジアムです。ここはゲーリックゲームしか行われませんでしたが、長い協議の結果、サッカーとラグビーのスタジアムであるランズダウンロードが改修される間、それらのゲームもプレーしても良いことになりました。アイルランドの歴史と共に歩んできたクローク・パークを、簡単にゲーリックゲーム以外に明渡したくない気持ちも分かる気がします。GAA MuseumスタジアムにはGAA博物館があり、ゲーリック・フットボールやハーリングの歴史的品々の展示や、ゲーリック・ゲームのアイルランドの歴史に果たした役割などを紹介する記録映像などを流していました。チームのユニフォームやボールなどのお土産も売っています。

 

ハーペニー・ブリッジ (Ha'penny Bridge)
ダブリンのランドマーク、ハーペニー・ブリッジも映画の中で出てきます。はしけ船が係留されるシーンの撮影もあったようです。この橋の名前は昔、渡るのに半ペニー(half-penny)を払わなければならなかったためだということです。橋は1816年に造られ、その優雅な形は歴史を感じさせます。3年前に修復も終え、市民の生活の一部として今でも機能しています。

Ha'penny Bridge Ha'penny Bridge

 

フォーコーツ (the Four Courts)
国のあり方を巡り内戦になった際に、イギリスとの協定反対派の司令部となったのがフォーコーツです。映画でもマイケル・コリンズにより砲撃され、あちこちが爆破されますが、Four Courts映画館で初めて観たときはどのように撮影したのか驚きました。歴史的建造物で、かつ現在も使われている場所を実際に壊せないし…。建物は1796年に出来、名前のとおり 4つの裁判所があることからフォーコーツと呼ばれていています。今でもアイルランドの司法の中心です。

 

その他の舞台
ダブリン中心を離れ、ローカル電車、DART で南に向かうと、リアム・ニーソン(マイケル・コリンズ)とエイダン・クインが自転車で走るサンディーマウント (Sandymount) の海岸が見えます。さらに進むとダン・レアリー(Dún Laoghaire)に着きます。そこは桟橋でリアム・ニーソン、ジュリア・ロバーツ、エイダン・クイン演じるキャラクターが3人でデートをするところです。会員制のボートクラブやイギリスへのフェリーやヨットが停泊するマリーナがあり、港を眺めながら食事も出来る、しゃれた町です。19世紀ごろから、ウォーターフロントのちょっとした憩いの町だったようで、映画では説明はありませんが、監督は登場人物たちがつかの間の休息を楽しんでいるところを示唆していたのでしょう。もう少し南へ下るとジェームス・ジョイスの小説「ユリシーズ」に出てくる "ジョイス・タワー" があります。

Dún Laoghaire

 

Bewley's Cafeこの他には、ダブリン城はイギリス統治の中心として、そのまま多くのシーンに使われていますし、1592年創立のトリニティー・カレッジや、シティーホール、セント・スティーブンス・グリーン(公園)、マンションハウスといったダブリンの中心地が登場します。1840年創業のビューリース・カフェも出てきます。また、マイケル・コリンズがブリティッシュ・エージェントからタバコの火をもらうシーンは、実際のコリンズも関わり、アイルランド自由国憲法の起草がされた、1824年創業のシェルボーン・ホテルです。泊まると高いので、バー・ラウンジでパイントを楽しみました。
 

Trinity College
Trinity College
City Hall
City Hall
Dublin Castle
Dublin Castle (Bedford Tower)

このように、一部を除いて撮影場所はほとんどが歩いて回れる範囲です。乗り降り自由の屋根なし観光バスに乗ればキルメイナム刑務所跡にも行けます。

映画は、結局、イギリスからの自治獲得から内戦まで描かれます。センチメンタルに脚色されすぎだといった意見がある一方、アイルランドの近代史を本格的にスクリーンに映し出した意義が受け入れられ、映画はアイルランドで大ヒット。ベネチア映画祭ではグランプリと、リアム・ニーソンが主演男優賞を獲得しました。

この映画の後、よくアイルランド人の友人の間で映画の真実とフィクションの部分について議論されていました。それらは例えば、クローク・パークでの事件は装甲車によるものではなかった、といったものでしたが、多くの人には、後の首相、デ・ヴァレラの描き方が議論の的だったようです。公開当時、ダブリンの至るところの本屋で、マイケル・コリンズ関連の本が平積みになっているのを見ました。ニール・ジョーダン監督というアイルランド人自身によって作られた映画は、外国人が作ったアイルランド映画と違い、たとえ細部が誇張されたとしても、時代の雰囲気や、その時代の人たちの苦悩を伝えたいという意気込みを感じました。英雄で、時に冷酷、そして平和を愛するという複雑な人物を、皆に知ってもらいたいという情熱が伝わってきます。歴史物といってもサスペンスあり、ロマンスありで映画的にも楽しめます。最後のシェネイド・オコナー (Sinead O'Connor) の歌が映画のラストにマッチして、ストーリーを盛り上げます。

参考資料: 世界の映画ロケ地大辞典 / トニー・リーヴス著 齋藤敦子監訳 晶文社
Michael Collins Trailer (Warner Bros) :
The Official Neil Jordan Website : www.neiljordan.com
Historic Dublin Images & Michael Collins Movie Photos : www.irelandposters.com/irish_movies/
The National Museum of Ireland : www.museum.ie
Heritage of Ireland : www.heritageireland.ie
Kilmainham Gaol : http://kilmainhamgaolmuseum.ie/

Croak Park : https://crokepark.ie/
Gaelic Athletic Association : www.gaa.ie
The Courts Service of Ireland : www.courts.ie
Trinity College, Dublin : www.tcd.ie
Dublin Castle : www.dublincastle.ie
The Shelbourne Hotel : www.shelbournedining.ie
Bewley's Cafe Theatre : www.bewleyscafetheatre.com
Dublin Tourism : www.visitdublin.com
アイルランド政府観光庁: www.ireland.com
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マイケル・コリンズ 特別版

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